新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

2009-01-01から1年間の記事一覧

総理「記憶がございません」。

いやな記憶を消し、楽しい記憶だけを残して生きていくことができれば、人は幸せになれるだろうか。 記憶だけを移し替え、新しい肉体を乗り継いで永遠に生きていくことができれば、人は幸せになれるのだろうか。 難しい問いだ。 もっとも、そんな問いを抱かな…

亡国たすけあい運動。

NHKが年末に行う恒例の「たすけあい」運動に全盲のピアニスト・辻井伸行が参加していた。 「お前はたすけてもらえよ」と思わずテレビの前で声をあげるような僕について、非常に強く批難するタイプの方々がいらっしゃるが、こういうのはおそらく一生治らない…

生き延びることだけが僕の趣味だった。

「リトル・ダンサー」をほぼ10年ぶりにDVDにて観直す。 80年代イギリス。産業革命以来の栄華を誇った炭坑は、すでにその時代を終えていながら完全には役目を終えられず、産業としては極限まで先細りながら凋落していくという、もっとも多くの巻き添えを伴う…

アヴァンギャルドの作法。

1571年(元亀2年)9月30日。織田信長は比叡山延暦寺を中心とした一帯に火を放った。 織田の狙いは近畿一円の抵抗勢力が文字通り「駆け込み寺」としていた延暦寺の影響力を排除、その軍門に下すことにあり、「信長の仏教嫌い」云々というよりは、純粋に地政学…

「才能に勝る努力なし」。

大学一年生の僕は三ヶ月のあいだギターを引き続けたあと、そう云ってギターを置いた。 「歳のわりに荒んだこと云うねぇ、キミ」 聞いていた七年生の先輩(この先輩は結局八年かけても大学を卒業できず、その後除籍になった)があきれたように云っていたのを…

わかった、要するにこの国の政治家たちはただの英雄なのです。

そんなある日NHKスペシャルで「証言ドキュメント 永田町 権力の興亡 第2回」が放映さる。音楽は川井憲治。 1996年の橋本内閣誕生からその退場以降、小泉純一郎の登場にいたるまでずるずると議席を減らし、誰の目にも「旧式のシステム」が取り返しもなく崩れ…

ゾウの渡り、望郷。【2】

極真空手の道場へ通う先輩に電話一本で拉致された僕はそのとき八丈島にいた。 5名の釣り好きと僕といういびつなパーティは台風で壊滅したあとの八丈島へ渡り、5名は3日にわたって防波堤からの釣りを楽しみ、僕は読書を楽しんだ。 そして帰りの機材が用意され…

ゾウの渡り、望郷。【1】

すでにご案内の通り、生命はみな生きて子孫を残すために生まれてくる。 このため生命体(思念体のことはよくわからない)の本能には「生きること」と「子孫を残すこと」に向けた強烈な動機付けがされている。 人間もまた然り。いかにブログなどを書いて高尚…

屹立する夏の暴力が守護するものは。

ビアガーデンという言葉の暴力的な響きに身を震わせよう。 「夏の風物詩」などという腑抜けたまやかしに気を取られてはいけない。 「ビア・ガーデン」すなわち「ビール・庭」という直截的なメッセージにはむき出しの暴力を感じなければならない。 そこにはビ…

アクシデンタル・ツーリズモ。2tの思い出。

生まれて初めてハイエースを運転した。デカすぎワロタ。 あまりクルマのことに明るくないため「荷物を運ぶ1BOX」という投げやりなオーダーを伝えた僕を出迎えたのは、いわば小型のバスだった。 僕はクルマの運転が下手だ。 まず這々の体で運転席へよじのぼ…

いきものがかりの内省。

酒を止めてちょうど半年が経った。 たった半年だが、あれだけのペースで飲んできた人間だ。腹の臓は延々と煮えたぎる釜がごとき有様であったのだろう。人間ドックの結果は、さまざまなメーターが即座に正常化する様をみせつけ、あらためて「酒は百薬の長」な…

愚問を繰り返す住吉美紀その他の人類。

知人の結婚式に備え、僕が書きつづっている一冊のノートがある。 頼まれてもいないのに披露宴で上映する気になっている「プロフェッショナル 仕事の流儀」の二次創作ビデオの台本である。 【シーン7 スタジオパート 1】 愚問を繰り返す住吉美紀 (上司との対…

悪夢の価値は。

Yahoo!知恵袋に「ガンダムの製造費用7,000億円」という、あまり価値のない推定が公開されている。 一方お台場のガンダムが5億円で買われていったという価値が不明の情報が流れる。 人間に体感可能な四次元世界は夢のなかだというのが僕の持論だ。 テーマがな…

実写とアニメのDMZ。

「『不気味の谷』現象をサルでも確認」。 「不気味の谷」とはこのようなグラフの表す谷を意味する。 曲線は被験者の感じるポジティブな関心。 被験者に見せられる「顔の画像」は、グラフが右へ動くにつれリアルなものになっていく。 人間が「人の顔」を描い…

未来予想図紛失。

モノが売れなくなっている。 これを不況のせいだとするのは偽りであり、現実から目をそらそうとしているのに他ならないという人に会った。 あるせまい業界で随一のキレ者と称される方だ。 高いものが売れず、百貨店はあいついで減収・減益を発表している。 …

非加熱サプリにて人生の運用利回りを向上せむとす。

人間にとって、もっとも限られた資源は「時間」である。 大人になると極刑をのぞきさまざまなかたちでいろんなことに落とし前をつけることができるため、これは裏を返せば代償を払えばたいがいのことは叶うということに他ならないわけだが、極刑をふくみ死だ…

これ以上すき焼きを食うようだと、俺はお前を。

あなたの友人の年収が800万円で、借金は8,000万円あったとしよう。年収の10倍だ。 毎年200万円を返済に充てるのだが、同時にほかから同じ額を借り入れている。完全な自転車操業である。 何を思うだろうか。 これがあなたの暮らしている国の実態だ。 参考まで…

テーラーを許す。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」をバルト9にてふたたび観劇す。 終わると前の席にいた青年がとなりの友人に「云いたいことはたくさんあるけど、まずは出よう。云いたいことはたくさんあるけど」と興奮気味に繰り返す。 いまごろ初めて観にきているお前にこ…

うどん、テンション、その他の顕現。

大幅な増資を発表した全日本空輸の株価が続落し、ついに320円を切ったという報せが世界をかけめぐっている頃、私は羽田にいて第2ターミナル60番ゲート脇のANA FESTAでうどんに食らいついていた。 ベースのうどんにきつね、山菜、温泉玉子ならびに舞茸の天ぷ…

エヴァはもういい。エヴァが観たい。

正直エヴァンゲリオンには飽きてきた。 「飽き」たという物云いに語弊があるなら「もう観なくていいと思うようになった」と云いかえる。 豊かなアニメーションとしても、学生の時分に強烈なインパクトを受けた文学作品としても、その価値はいまだにいささか…

無常の世界を引き留める負債というシステム。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を観てきたが、情報量が多すぎて頭も心も満杯なので、某所に挙げた過去の日記を転載することで急場を凌ぐ。 以下、転載。 ガイナックスについて調べていたらWikipediaに意外な記述があった。 それはガイナックスがかつて「…

「坊やだから」では済まされない。

競争を勝ち抜くことを目的とし、相手の生死に斟酌しないととるならば経営とは戦争である。 だがそれ以上に戦争は経営だ。 アフタヌーン新書 006 ジオン軍の失敗 作者: 岡嶋裕史 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2009/05/08 メディア: 単行本(ソフトカバー…

根拠なき妥協の結果、赤羽に住むとする。

北区は東京23区であるからして何も極北の地というわけではないが、不毛な実態はその名のまとうイメージを上回る。 最大の都市と思われる赤羽ですらiPodを売っていない。 民は池袋へそれを購いに行く。 一駅北上すれば川口で手に入ろうが、彼らは河を渡るとそ…

独裁者の喜劇、アスリートの悲劇。

予備校で現代文を教えていた講師は、生徒が30分の問題を解くのに1時間をかけさせた。 「ゆうべの貴乃花は5秒で勝負を決めた。本番は5秒だ。だからと云って稽古は5秒でいいのか」 本番は時間が限られている。だが稽古では時間をかけ、ただしい解法を身体に教…

俺らの人生、プライスあり。

足利事件の「被害者」と化した元服役囚の菅谷さんに栃木県警の本部長が謝罪。 バシャバシャとフラッシュの焚かれるなかで外連味たっぷりの言葉を口にした本部長を菅谷さんは赦す。 国家賠償の請求が始まる。 それがいかほどの額をめぐって争われる訴えなのか…

愛することができないときも、憎むことだけは忘れるな。

今年初めての凄まじい雷雨だったが、雷はあなたの近くに落ちただろうか。 夏が近づいている。 小学校にあがる前、一度だけ町内の「納涼会」なるものへ母親に手を引かれて行ったことがある。 なんとなく知った顔ばかりだったが子どもには珍しい夜明かりのなか…

丸腰の天使は郵便を待っていた。

<拳銃置き忘れ>コンビニトイレに 広島の巡査長 6月13日11時1分配信 毎日新聞 13日午前2時50分ごろ、広島市中区西十日市町のコンビニエンスストア「ファミリーマート西十日市店」のトイレに、広島県警広島東署刑事1課の男性巡 査長(33)が、実弾入…

自嘲や諧謔の域を超え、男はもうダメっぽいです。

「強い」とかそういう次元の問題でなく、女にはかなわないと常々考え続けている。 それは「ま、なんだかんだ云っても基本男の方が優位なんで、云うだけなら男の方が弱いとか下だとか云ってみてあげるのがむしろ男の優しさっていうか、俺ってジェントルマン?…

ポテチは新たな次元へ飛翔し、観客は眉をひそめる。

後日詳述するが、福岡伸一は「できそこないの男たち」の最終章で人間の第六感について語っている。 曰く視覚、聴覚や味覚あるいは触覚といった五感のすべてを奪われたとしても、遊園地のフリーフォールに載せられれば、私は「落下していること」を感じるであ…

「重力ポテト」。

新宿はバルト9にて「重力ピエロ」を観る。 まず脚本家はもう、ほかの仕事を探した方がいい。 小説だってそうだが、映画は言葉のみによって成り立つのではないし、言葉を積み上げたところで小説にならないのと同様、言葉を書きつらねたところで映画はできない…