新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

2010-01-01から1年間の記事一覧

税を語れ候補者

日本の民主主義がその根本から歪んでいることを示すひとつの例は、「税理士」という職能の存在である。 wikiを引いても、日本で云うところの税理士が存在する国は世界でもいくつかしかない。 米国などでは税務申告は資格がなくても業としてこれを行うことが…

法治国家は焼肉屋を救済しない。

官吏や法曹がなにか法律の運用を誤ったとき、この国は法治国家ではないのかという怒りの声が巻き起こる。 この怒りは二重に間違っている。 まず法治国家の原則というのはもちろん、人に過ちを許さないといっているのではない。過ちは過ちであり原則は原則だ…

長いお別れ。

大学の長い夏休みが明けると、教室に居並ぶ学生の背中は身体のなかに抑えきれない熱を抱えているように見えた。 教授の点呼に、はいと声をあげて答えるとその背中のいくつかが驚いたようにぴくりと動き、何人かが首を巡らせてこちらをうかがうのが見えた。 …

引きこもれない。

すわ週末。 「明日は引きこもるぜ!」と布団に入り、13時間あまりも寝たところまではよかったが、起きて「NHKにようこそ」の1巻を観てしまうと、2巻以降がうちにはないため30分後には家を出ることになった。 * * * * * Sが会社を辞めたいと云いだした。…

店舗型告白のキルレシオ。

27歳女性にメモ「好きだ」…59歳男逮捕 宮崎県警は24日、住所不定、臨時作業員那須今朝男容疑者(59)をストーカー規制法違反容疑で逮捕した。 発表によると、那須容疑者は4月から5月にかけ、宮崎市内のアルバイト女性(27)の軽乗用車に、「好き…

ツキノウラガワ。

うさぎふらすこが「株式会社うさぎふらすこ」を名乗って1ヶ月が経った。 この間あったことといえば、人の悩みを顕微鏡でのぞくようにためつすがめつする「BUZZOO!知恵袋」がリリースされたり、偽装になっているのかなっていないのか分からんTwitterクライア…

ゆくはかえるの橋。まず己の主であれと晴明は語った。

列をなしてしゃがみ込んだ修学旅行生は野菜畑のようにコンコースを埋め尽くしていた。京都はこの季節もまた修学旅行シーズンのようだ。若い娘が好きでたまらない銀河さんの視線を遮りながら、そそくさと駅を出る。暑い。梅雨が明けると京都の熱気はまるで霧…

MPとケツの穴。

熱することなく、されど誠実であることには妥協せず。 三時間にわたり思いの丈を語り尽くしたあと、自分のMPがついに0になったのを感じた。 呪文が全部非アクティブになり、選択できない。 予兆はあった。二日後、かねて祈祷の予約をしてあった京都・晴明神…

糾弾。

いわゆるところの通勤ラッシュを受けて、JR赤羽駅は夕方の6時から7時半のわずか1時間半を限りに、これでもかというほどの人混みにあふれかえる。 ひょっとしたら埼玉かと思われがちなへんぴな土地に果たしてこれほどの大都会が存在したのかと、初めて訪れた…

脱南チャプチェと不穏な雨。

降るのか降らないのか、よくわからない天気が続いており、気候は不穏である。 そのさなか、ゆえあって韓国料理屋を転々とす。 中野「パッチギ」は駅前から五丁目を早稲田通りまで抜ける夜のメインストリート入口に店を構えるポップな新店。 10坪ほどしかない…

もしどら。

どうしても通らねばならぬ道がある。 子供たちは「桃太郎」や「赤ずきん」を読んでおかなければ世の物語を貫く基本的な筋道を理解することができないし、バーテンダーになったって、せめて分数の足し算ぐらいはできないとどうにもならない時がくる。 どんな…

姉さん、ポップが死んだみたいだ・・・姉さん。

最近楽天のロゴがでかでかと貼り出された「有料動画サイト」のShowTime が「交響詩篇エウレカセブン」の冒頭7話を無料で配信している。 「後悔しないから是非観てくれ」と薦めたいところだが、終盤必ず後悔する作品なのでごり押しはよす。ただ中盤までは無理…

Eのためのノート。

僕は初めてEに出会った日のことを鮮明に覚えている。 まだ駆け出しの管理職だった僕に突然、僕が採用したわけでもなく、僕の部下になるわけでもない新入社員のオリエンテーションが回ってきたのだ。 「うちの会社はほら、いろいろ複雑だから、野良パスタさん…

ダッカ2010:言葉は僕のものではない。

暑い/寒い、辛い/甘い、高い/低い、尊い/醜い、清い/汚いと、言葉は一見自由だ。 あるいは言葉は組み合わせによってさらに多次元的なスペースを飛び回ることができる。「ドブネズミみたいに美しく」というやつだ。こうすれば言葉はもう美しい/汚いとい…

プール再訪。政府はそこにいる。

昨夜よりは早い時間だったがプールサイドに客は多くなかった。相変わらず飛び回る大ぶりの蚊を気にしながらビールを飲んで、僕はT氏がビュッフェから戻ってくるのを待った。「凄い量ですね。アメリカ人みたいですよ」戻ってきたT氏は皿にいっぱいのバーベキ…

ターミナル。

空港ではきたときと同じ身のこなしのいいオフィシャルの男が現れて我々の荷物をひっつかんで出国と搭乗の手続きを済ませてくれた。 ロビーのベンチで荷物の整理を始めると、オフィシャルは「もういいかい」と尋ねた。 「サンキュー。喫煙所はある?」と僕が…

「貧しい人々」。

車がダッカ市内の街角を曲がると、そこに突然「貧しい人々」がいた。 Aさんは彼らのことを"poor people"と呼ぶ。彼は頻繁に"poor"という言葉を使うのだった。 知らない町でその一帯の「雰囲気」を正しくつかむのは簡単ではないが、ここも僕の目にはごく普通…

コーラン。ババ抜きは続く。A氏は安寧を願っている。

最終日の朝は遅めの朝食にして身体を休める。今日の夜ダッカを出る便で出国すると、成田まではまた長い旅になる。 ビュッフェでは果物や野菜を慎重に避ける。 二日前にホテルに着いてから、僕は歯を磨くのにもミネラルウォーターを使っている。水道の水を使…

ダッカ2010:言葉は僕のものではない。

暑い/寒い、辛い/甘い、高い/低い、尊い/醜い、清い/汚いと、言葉は一見自由だ。 あるいは言葉は組み合わせによってさらに多次元的なスペースを飛び回ることができる。「ドブネズミみたいに美しく」というやつだ。こうすれば言葉はもう美しい/汚いとい…

プール再訪。政府はそこにいる。

昨夜よりは早い時間だったがプールサイドに客は多くなかった。相変わらず飛び回る大ぶりの蚊を気にしながらビールを飲んで、僕はT氏がビュッフェから戻ってくるのを待った。「凄い量ですね。アメリカ人みたいですよ」戻ってきたT氏は皿にいっぱいのバーベキ…

各国の鍋。

車を連ねて村を出た我々は、Aさんの幼なじみで議員のHさんが経営する繊維工場を表敬訪問した。 地震国からきた私にはどう見てもにわか造りにしか思えないその工場、というかむしろ作りかけなのか壊しかけなのかというぐらい半端な作りの工場は、しかしここ数…

&quot&#59;She is noble.&quot&#59; - そして社会は時代の要請する産業へ若者を送り込む。

そこは青空教室だった。 校舎内に作られたいくつかの教室は、おのおの90人前後の子供たちであふれんばかりになっており、校舎の一番端には教室に入りきれなかった、これも同じくらいの人数の子供が地面に敷いたビニールシートのうえで授業を受けていた。 Aさ…

坂の上の雲はバングラデシュにも出ているか。

"Welcome to our school!"校舎へ向かうあぜ道を行くと、両脇に並んだ制服姿の少年少女が拍手で我々を迎えながら口々に叫んだ。 「サラーム・アライ・クム」という控えめな声も聞こえる。イスラム圏に共通する挨拶で、返事は「アライ・クム・サラム」だったは…

30年目の帰郷。

たった二本のビールだったが、二日酔いまでにはギリギリの状態だった。 約束通り8時に最上階のクラブへ行くと、T氏はすでにテーブルについて朝食を始めていた。 オムレツを語らせると右に出る者のいない昨日の男は非番のようだ。おかげでコーヒーも一杯です…

マラリア。野性の人間とは。

プールサイドにセットされたテーブルの周りでは、巨大な蚊が灯りに照らされながら飛び回っていた。 先ほどから僕の脳裏を明朝体の「マラリア」がいったりきたりしている。 「季節や地域によっては」マラリアに留意する必要があると外務省のホームページでは…

カトマンズの夢。

日が傾いていた。川下りにかかる時間とあの渋滞を考えると少し長居しすぎたようだった。兵士が露払いをしたあとの道をそそくさと歩み、村を後にする。みぞおちのあたりが砂袋でも?んだかのように重く感じた。僕はいったい何を見たのだろうか。村に入ったその…

「彼のアクセントが私には理解できません」と彼女は云った。

驚いたことにその村には学校があった。 しかし読み・書き・算盤のそのどれもが役に立ちそうもない村の広場の裏手には、三つの教室を備えたコンクリート製の小さな小学校が確かにあったのだ。 ただしコンクリートは四方を囲む壁だけで、屋根は半分飛ばされて…

絶望の不在。

僕とT氏は15名を数える取り巻きを従え、1頭の小ヤギと1人の兵士に先導されて、そのおそらく名もなき村に立ち入った。 後ろでは先ほどまで道の両脇に詰めかけて拍手で僕たちを出迎えた人々が言葉もなく静かに散開して、農作業に戻ったり、どこかへ向かった歩…

子ヤギの案内に、僕は来意を告げた。

のっぺりと広がる川面がだらしなく二つに分かれた。その支流と思しき方へボートが分け入ると、そこから20分ほど行ったところが目的地だった。ここもまた、ただ浮き草をかき分けただけの「船着き場」と思しき川辺の一角があり、我々のモーターボートは順番に…

ハート・オブ・ダークネス。王の気配。

ダッカを出発して2時間あまりの間、車列は進んでは停まりを繰り返した。 市街地はすぐに抜けてしまったが、郊外から水田の広がる農村地帯に入っても道は延々と渋滞が続いている。たまに流れがよくなると、ドライバーは必ずここぞとばかりにクラクションを鳴…