新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

2018-01-01から1年間の記事一覧

流血、マリファナ、明日の翼/歳をとるとひとは

かつてこの街に端を発した騒擾は、流血を経てひとつの国を興すに至る。人類史上初めて国際社会に倫理を訴えた若き理想家のごときこの国は、二世紀あまり後のいま、振り上げた拳の降ろし方に戸惑う白髪交じりの壮年になった。太平洋から始まった道程は、大西…

ミューテッド/ベースが止まると音楽は

歌舞伎町のアンド・ケーで書籍版「新宿メロドラマ」の頒布会をやったとき、若いひとたちをつかまえて滑りまくっていたNさんというひとがいたと思うが、このひとは酒癖は少しアレだが本当にいいひとで、昔から名前はよく聞いていたものの昨年から一緒に仕事を…

敗者のための一ページ/不埒な河原でバッドラックとダンスを

米国とは建国以来一つの投機であった 「バブルの正しい防ぎ方」(ロバート・シラー) アメリカというのはそのそもそもの初めからベンチャーであり、成功したベンチャーであり、いまや年老いたベンチャーである。 ベンチャーは生まれながらにして不埒であり、…

深夜を過ぎて三十分/終わってしまった戦いのあと

本当はこんなブログを書くのではなく大見得を切って予告したとおり長編小説を書かなければならないのだが、この一ヶ月ですでに三回挫折しており、これは少々方法論について落ち着いて考えなければならないぞということになったため、その間はブログに時間を…

Xの墓標/ウィー・オン・ザ・トレイン

四年あまりにわたったボストン生活がまもなく終わろうとしている。 ということばかり最近はつぶやいているが、これは大変なことなのでしばらくはこの調子でやらせてもらう。 私の書いたチラシの裏をのぞいているのはあなた方だ。 いまちょっとしたスタートア…

ゴーイング・リベラル/僕たちのトレーサビリティ

リベラルな暮らしにはカネがかかる。 今年のボストンは例年よりも早い冬の訪れを感じさせ、十月も半ばになればとてもじゃないがマウンテンパーカーなしに外を出歩けなくなったから、いちはやくホームレスに対する支援を開始している。年末までのもっとも厳し…

叶えられた祈り/エイジ・オブ・イノセンス

世界のなかでどの街に暮らしたいですか、という質問に答えるのは存外に難しい。 どの街にもその街の暮らし方というのがあって、誰にだって「好きなように暮らせる街」などはまず存在しないからだ。 僕にとればサイゴンは恋人で、香港は愛人で、新宿はいまや…

暮れない午後のサボテン。

あれから何年が経っても朝六時の歌舞伎町は最悪だ。 くたばりかけた夜の口から吐き出されてきたヤクザやホストやそのどちらにもなれない奴らが通りや路地へとあふれていて、どこへと消える様子も見せずにたばこを吸っている。ヒールの女はどれもバッグと紙袋…

「トラフィック」。夢を弔う。

東京を飛び立って時間が経つにつれ、僕の時間とみんなの時間が少しずつ離れていくのがネットを見ていると分かる。 出張で日本へ帰っている一週間のあいだ教室でみんなと一緒に授業を受けていた僕は、また明日から僕だけが保健室へ登校することになる。そんな…

チャリティ・ファッジ・プリキュア。

チャリティ・ガラのチケットを買えという話がもう十年以上前にあった。 「リーマンショック」って聞いたことがあるだろう。あの少し前のことだ。 日頃から「カネは出すなら、ただ出せ」を唱える私にとり、いくつ星のレストランで飯を食う行為は慈善ではない…

新世界より、チャリティー・ワン。

アメリカでは、と語るほど私はアメリカというところを知らない。 だが公平な意見を聞きたいならインターネットは正しい場所ではない。 だから時が経つにつれ洗練されていく圧倒的な暴力の高まりを日々周囲に感じながら、私は今日も云いたいことを云うだろう…

エンサイクロペディア/失われた都とふたたび甦るべきもの

アンコール・ワットを知ってるだろう。 私はアンコールワットを、その「樹海に侵食された遺跡」という誤ったイメージから「失われた伝説の都」だと思い込んでいた。 そこで彼の地を訪れた際には現地のガイドに何か鋭いことを云ってやろうと思い、 「こんな巨…

タイムパラドクス/当選しなかった大統領の犯罪。

最近かなりまじめに仕事をしていて、まじめにというかこれはほとんど今までのツケが回ってきただけの話なのだが、それをやってみて思うのは、やはり仕事をするなら社員がいなければダメだということだ。 一人社長とかはもうやはり無理だ。社員がいないとたし…

マッサ・ゴー・ゴー/キングの午睡

私はマーチン・ルーサー・キングJr.を尊敬している。 “I have a dream.”と語りかけ、現代アメリカのもっとも暗い歴史の中に斃れたあのキング牧師だ。 私にも夢がある。 いつの日か顔のところに丸い穴のあいたマッサージ用のベッドを家に買って、夜はそこでう…

雄弁な真実、寡黙な嘘。「ダニエル・カーネマンは信用しない」。

天才の話が好きだというひとは多い。 だからといって道を謬らせるような醜い憧れや妬みのない、素直な歓びがそこにはあって好きだ。 きっと子どもが空を指さし、鳥や飛行機に声をあげるのと同じだからだろう。 我々が天才と出会うためには、少なくともふたつ…