Facebookでお薦めいただいたb-mobileのデータ通信専用SIMがどうも思うに任せず不満が募ったので、せっかくではあったがIIJmioに乗り換えた。
それも新宿ビックロにて販売されている「BicSIM」とかいうパッケージだ。
Wi2 300のWi-Fiを無料で使えるアカウントが発行されるのがありがたい。
要するにテザリングのできないMVNOとしてはこのカップリングがベストソリューションということなのだろうが、正しいと思う。
「ビックカメラはいいかげんに間違いをみとめろ」というスレタイが好きだ。
今回は音声通話付きSIMなので久々にまともな電話番号が発行されたが末尾4ケタが「0666」で見事にマンソン・ファミリー入りした。
わたしはクリスチャンではないのでそこまで気にすることはないけれども、こういう番号はやはり欠番にしておくかメタルファン向けに裏でこっそりプレミア販売するのが正道ではないかと思う。
なおかつて一世を風靡した携帯ショップでその当時働いていたイケメンが職権を乱用して7ゾロみたいないい番号と来店する女子高生を食い漁っていたという話を聞いたが、こういう連中は超法規的に死刑ということでこれからもよろしくお願いしたい。
さて、いよいよ暮れも押し詰まっており明日は恒例の「新年の抱負」をアップする日なので、残った読書メモを一挙に振り返って本年の〆としたい。
2014年の読破数はしめて60冊であった。
45冊目は「世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析」(斉藤環/角川書店)。
- 作者: 斎藤環
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/06/30
- メディア: 単行本
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「精神分析」というのは筆者が精神科医でありオタク領域で「精神分析」をキーワードにオタク領域の著作活動に励んでいるからこうなっているだけで、実際に医学的な意味で精神分析がおこなわれるわけではない。
ただ日本人の半分ぐらいは「ヤンキー的なるもの」を好ましく思っており、たとえば橋下徹大阪市長みたいな人がなんとなくそれなりの支持を受け続けるのもきっとそういう背景からくるのであろうということを述べ、ではその日本人が「なんとなく」ほのぼのと見守ってしまう電飾とファーをてんこ盛りにしたミニバンは要するにいったい何の表象なのかということを考察しているのはそこそこ面白い。
49冊目は「聖書を語る」(佐藤優、中村うさぎ/文春文庫/Kindle)。
中村うさぎはミッションスクールを卒業してはいるが(当然)自分のことをクリスチャンだとは認識していない。
ただ佐藤優との対談という企画が面白そうだと思って乗っただけのようだ。
だがその佐藤は整形、デリヘル、散財とキリスト教の教義が禁じるところを尽くす中村が、生きるにおける動機としてキリスト教的衝動を秘めており、そうした振る舞いにおいて神との対話を試みているという意味で紛れもなくキリスト教徒だと断じる。
ここからキリスト教の世界観、人間観について中村の好奇心を佐藤が満たしていくというかたちで対談は回を重ねていく。
あとがきにおいて、病に倒れて以来2度もの心肺停止を経ながら意識不明のまま入院を続けていた中村を愛の人だと佐藤が語るくだりは涙なしには読めない。
50冊目は「世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち」(マイケル・ルイス/文春文庫)。
- 作者: マイケルルイス,Michael Lewis,東江一紀
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 文庫
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リーマン・ショックからは6年あまりが過ぎたが、世界の金融市場を恐怖で金縛りにした大手投資銀行の倒産とそれに続く混乱は我々の記憶にいまだ新しい。
だが実際に何がおこったのかをおおまかにも説明できる人は決して多くないだろう。
巻末の解説にも書かれる通り、投資銀行で働く人々ですら「自分の会社のことはニュースを見て知る」というほどなのだから、我々一般にその本質を理解するのはますます容易でない。
「ライアーズ・ポーカー」で80年代に爆発的成長をみせた債券トレーディングが「発明」された様子を描いてデビューしたマイケル・ルイスは、かつて自らがソロモン・ブラザーズで誕生を目撃した巨大市場が20年あまり後になってついに世界を飲み込みながら崩壊した様子に驚愕し、ふたたび証券業界を舞台としたノンフィクションを発表した。
根拠なき地価上昇を頼って無責任に住宅ローンを販売するローン会社、そのローンを引き受け証券化して投資家へ売りつける銀行の不道徳、さらにその証券の償還を保証する保険を売りまくる保険会社のあきれるほどの無見識、マイケル・ルイスが「ライアーズ・ポーカー」で描いた愚かで強欲で醜悪な世界はなんと21世紀まで脈々と生き続け、なお規模を拡大していたのである。
この恐るべき虚構に気付いたわずか数名のバンカー、ファンドマネージャーたちがひそかに逆張りを始め、やがてガラガラとマーケットそのものが崩れ去るなかで未曾有の利益をあげる様を追いかけつつ、サブプライムローン問題とはなんだったのか、何がそれをもたらしたのかを丁寧にたどる一般向けのノンフィクション。
小説のように読める一方、歴史書としての価値をすら併せ持つ良書。
53冊目。「はじめての留学」(堤未果)。
「貧困大国」となったアメリカの現状と、それを仕掛ける大企業群のアンフェアな経営活動について告発を続ける筆者の「デビュー作」。
高校を卒業したあと西海岸へわたり、シェアハウスで生活しながら最初のカレッジを卒業するまでの日々を描いたみずみずしいルポである。
中高生にも読めるぐらいの平易な文章でコンパクトにまとめられているが、語学留学ではよく問題になるように、日本人同士がつるんで楽しくやっているうち留学にきた意味も忘れてしまって何も得ることなしに帰国していく同世代の若者たちに対する視線は厳しく留学への覚悟をかためるためにはいいかもしれない。
筆者の提出したエッセーを「盗作だ」と一方的に断じる教師に対して「アンフェアだ」と涙ながらに訴え続け、やがて和解にいたるエピソードは日本人がアメリカでやっていくときに必要なガッツと主張、honestyと社交辞令の大切さをうまく伝えている。
56冊目。「留学で人生を棒に振る日本人」(栄陽子/扶桑社/Kindle)。
留学で人生を棒に振る日本人―“英語コンプレックス”が生み出す悲劇 (扶桑社新書)
- 作者: 栄陽子
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2007/03/23
- メディア: 新書
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自称日本で初めて「留学アドバイザー」を開業した筆者が、アメリカ留学を希望しているにもかかわらず、あまりにもその実際について疎い日本人の学生や親が多いことへの危機感から著した啓発書。
留学エージェントが留学先としてよく薦める「コミュニティ・カレッジ」は低所得者向けの職業訓練校のようなものであり留学にむかないばかりか、その先の進学にも繋がらないなど、アメリカの教育制度、大学事情が日本人にはあまり知られていないがゆえに発生する代表的なトラブル事例を挙げながら解説。
日本の大学で取得した単位を引継ぎながらリベラルアーツ・カレッジへ入学したあと総合大学(ユニバーシティ)へ転入するなどアメリカの教育制度・文化を理解したうえで自分の目的に相応しい留学のスタイルを選択すべしと主張。
現実的に留学を考える家族にとっては最初の手がかりによいだろう。
57冊目。「哀しき半島国家韓国の結末」(宮家邦彦/PHP新書/Kindle)。
タイトルが悪い。
「結末」というと韓国への呪いをこめた嫌韓の流れを汲んだ本だと思われそうだが、実際には元外交官が外交官らしい目線で今後ありうる朝鮮半島の来し方について、24通りものシナリオを検討し、それぞれに日本の国益にどう働くかを読み解く書。
紀元前まで歴史を遡り、朝鮮半島の情勢は中原を支配する中国王朝と華北の支配状況、ならびにマンジュ地方(いわゆる「満州国」があったあたり)の状況に左右されるという仮説を導いたうえ、これに基づいて思考実験をするという極めて正統的な地政学の考え方に基づいている。
そもそも地政学的見地から今後の情勢を読み解くことの適否はさておき、本当にリアリスティックに日本の国益を考えるならば闇雲に韓国を批判したり、日韓の国交断絶を叫ぶものでもないということを理解すべきだという隠れたメッセージには僕も賛同する。
イギリスの例を持ち出すまでもなく、島国において大陸のバランス・オブ・パワーは文字通り死活的に重要なのだ。
真に国益を実現する政府は真に国益を理解する国民によってしか選ばれない。
果たして現在の日本ではどうか。
58冊目。「外務省ハレンチ物語」(佐藤優/徳間文庫/Kindle)。
自身、軽蔑しつつもその目的においては使命感をもって職務に専心していた外務省の組織から放逐された佐藤優の報復がやむ気配はない。
本書は佐藤初の「官能小説」と銘打ちつつも外務省幹部のあまりといえばあまりに乱れた内情の一端を描き出す告発本の性質を併せ持つ。
なかでも公費流用、有印公文書偽造、レイプなど「殺人以外のあらゆる犯罪に手を染めたといわれている」と繰り返される大使経験者の振る舞いには吐き気すら催す。
どうやら確たるモデルが存在するらしいことがそこかしこに匂わされるが、それも1人ではないらしいというところにはのけぞるばかりだ。
60冊目。「ネルーダ事件」(ロベルト・アンブエロ/ハヤカワ・ポケット・ミステリ/kindle)。
1970年、チリでは史上初めて自由選挙により選ばれた社会主義政権が誕生した。
大統領に就任したサルバドール・アデンジェは圧倒的な民衆の支持を得て社会主義的改革を進めていくが、民主主義と社会主義は両立しうると信じるアジェンデはあまりにも理想肌でありすぎた。
ソ連、キューバといった社会主義陣営からの充分な支援のないまま次第に困窮していくチリ社会では政権への逆風が強まり、やがてニクソン政権の後押しを受けた軍部によるクーデターによりアジェンデ政権は誕生からわずか3年で転覆、アジェンデは大統領宮で自害して果てた。
その後に続くピノチェト軍事政権は90年代までに無数の左翼知識人・活動家を弾圧し、投獄、殺害された者ならびに行方不明者は自由化までに数千人を超えるとされる。
アジェンデ政権誕生から転覆までの3年間を、架空の日本人商社マンたちの視点から描いた深田祐介の「革命証人」は、これもまた内容豊かな小説としてお薦めできる。
以上60冊。
乱文にはただただお詫びするばかりである。
それぞれによいお年を迎えられたい。