4月半ばに書き始め、ついに公開されることのなかった下書きが発掘されたため、加筆修正のうえお届けする。
従って時制のズレはご容赦願いたい。
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ほぼ雪山の生活だったボストンの冬が終わり、春がやってきた。
冬は当然、観光客も激減してホテルの宿泊料金は軒並み下落、というか多くのホテルではこの間にリノベーションをやるらしく、旧正月にベトナムから遊びにきた知人と泊まったホテルに至っては広大なロビーが丸ごと破壊されて「12モンキーズ」か「未来世紀ブラジル」のセット、または米軍の爆撃を受けた大統領官邸さながらで、片隅に設けられた「ベビーカステラ」の屋台みたいなところでフロント係が仕事しているのが滑稽で、健気で、泣けた。
それに引き替え4月も半ばを過ぎた頃のボストンといったらどうだ。
街はジェラートをすすりながらそぞろ歩くTシャツの豚どもで文字通り溢れ返り、しばらくぶりにテーブルが広げられた店の前のテラスは陽光のなかで肉とフライドポテトをむさぼる12モンキーズたちで満杯だ。
この街の産業は季節労働。ここからがボストンの稼ぎ時だというわけだ。
今回ボストンに来てから3週間が経とうとしているが、3日にあげずジムに通って10kmずつ走り続けていると着実に体力が衰えていくのがわかる。
急増する活性酸素を処理しきれず、酸化作用によって身体が老化しているのだ。
まさに過ぎたるは及ばざるがごとし。
体調悪化、急降下。まさに敵機直上、急降下!
久しぶりにマジもんの不眠が再発しているが、これは溜まりたまった時差ボケか、はたまたジムへ行く(徒歩3分)ほかはまず外出しない生活のせいなのかというレベルなので自力救済の予定だ。
そんなボストンで行きつけのベトナム料理屋が、近頃ランチの客単価向上策を打った。
一品ものに「ランチセット」(前菜盛り合わせ、スープ、サラダ)の抱き合わせを薦めるのと、「タイ・アイスティー」を頼んだ客に「With Bubble or without Bubble?」と訊いてくるのとだ。
プロアマを問わずおよそ投資家のなかに「バブルにしますか、しませんか?」と訊かれて「しない」と答えるやつはいない。
「With Bubble」と答えると、底に溜まって到底飲みきれない量のタピオカが入ったアイスティーが出てくる。
客単価1ドルアップ。
いい戦略だ。
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サブプライムローンバブルが弾けるまでは「マエストロ」と崇められたアラン・グリーンスパン元FRB議長の証言。
「バブルというのは不可避だというのが私の結論です。人間はそれを回避することができないのです。失敗から学ぶこともないでしょう」
毎度飲みきれないバブルに1ドル払ってしまう私の姿をみごとにいいあてている。
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日記はここで終わっている・・・。
時は変わって2015年の12月。いよいよ今週は今年最後のFOMCであり、歴史的な利上げが決定されるであろうそのときが近付いている。
これをうけて株式市場には先週から激しい動揺がひろがっているが、これは長きにわたる「利下げ(金融緩和)→株価上昇」というパラダイムが大きく変化しようとしているからであって、まもなく相場は「利上げ→成長は堅調というコンセンサス→株価上昇」という景気拡大期のパラダイムへ移行するであろう。
そしてそれこそが、あらたなバブルに向けた10年の旅路のはじまりだ。
With Bubble or without Bubble?
人間というのは哀しい生き物だ。
乗っていく以外に、どんな生き方があろうか。