新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

これはヘッドンホホの宣伝です。

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さて、7泊9日の東京 - ホーチミンシティ出張を終えてボストンに戻った。
前回3月の出張では、8泊11日という完全に日数と泊数の帳尻があわない日程を組んで、終盤香港あたりで蒸発してしまいそうになったため、今回はより短い日程とはいえレッドアイを避け、宿泊だけはきっちり押さえた。

たまにおっさんが
「若い内は体力が勝負だから多少無理を利かせても仕事になるけど、歳をとると仕事の性質が変わるから、しっかり休養をとりながら仕事をしないと役目を果たせない」
というようなことを口走ることがある。
だがこれはただの云い訳であって、おっさんだって体力が許せばもっと時間を有効に使うべきなのは当然の話だ。
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ところで「たまにおっさんが」と云ったのは、実は以前一緒に仕事していた人物のことをはっきり仮想敵にして話している。
このおっさんとはいろいろあったが、一番記憶に残っているのは、
「キミは何のためにこの会社で働くことにしたのかね」
と尋ねられ、
「この会社が思いがけず成長をとげるのか、あるいは想像通りつぶれてなくなるのか、その行く末に興味があるからですね。クビにならない限りは見届けるつもりです」
と答えて、
「ところで、おっさんは(実際には名前で呼んだ)いつまでここで働くつもりなんですか」
と訊き返したら、
「僕はね…家が建つまで」
と満面の笑みで返されたことだ。
「あいつ、なんかおかしいですよ!」と騒ぎ立てたのだが、どうにもならなかった。
おっさんが巨額の損失をもたらすのは、それからまだ5年後のことだ。
その頃ちょうど30歳に近づいていた僕は、そろそろ一種の勘が自分にも備わってきたことを確信し始め、以降徐々に自分の感覚に信頼をおいて仕事をするようになる。
僕の「仕事人生」にささやかな夢があるとすれば、それは自分の言動が若いひとたちに不穏な違和感をもたらすようになるまえに、彼らの前から姿を消すことだ。
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今回の出張は、ボストンの家を出てから戻るまで、しめて242時間だったといま電卓が云った。
その間、フライトに費やされたのがおよそ42時間。
全日程の17.4%という時間が円環の理に導かれて消えた勘定だ。
 
なかでも初体験になったボストン - 香港の15時間50分のダイレクト・フライトは衝撃だった。
何が衝撃と云って、客がほぼ貨物扱いされていること。
往路は深夜発とはいえ、その長時間ならもうちょっと何かあるだろうと思ったのだが、飛んでから降りるまで、ほぼ消灯で客はひたすら眠らされていた。
優に10時間以上。
UNOもカラオケ大会もなかった。
コールドスリープかよ、「2001年宇宙の旅」かよ、とも思ったが、手法としてはまぁ、まさにそういうことだ。
 
エコノミークラスとはいえサービスもほとんどなかった。
2回だけ提供された僕たちのエサをご覧いただこう。まず離陸直後から。

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今日びは宇宙飛行士でももう少しいいものを食べている。
しかも宇宙飛行士は職員かもしれんが、こっちは客だぞ、センはどこだ!センを出せ!という話。
 
それから12時間が経ってようやく、2回目に供されたのがこちら。

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ムショかよwwwww
 
以上、キャセイ・パセティック航空のボストン - 香港便のハダカの姿をお届けした。
ただし私の経験上、いちばんひどかった機内食は今はなきノースウエストの001便で、こちらはしかもビジネスクラスだった。
過去のエントリーにてご紹介している。
まずはこの、完全にメーターが振り切れたタイトルをご覧いただきたい。

前置きが本体化してしまうのが弊ブログのお家芸であることを、愛読者の皆さんならよくご存じだし、快くお許しいただけるものと思うが、ここからが本論だ。

私は前回、ボストンへくるANAの機上で念願のQC20を求めた。

BOSE社が出している、最新型の「ノイズキャンセリングイヤホン クワイエット・コンフォート20」のことだ。

高級ヘッドンホホポチったったwwwそして届いたったったたwwwwwwwwww - Sound Field ~オーディオのまとめ~

2ちゃんねるという情報ソースでもよく話題になっているが、ここのところ身の回りの経営者にも大変好評で、もうここまできたら試してみるしかないと思っていた。

結果はもう、圧倒的だ。

ご存じの通り飛行機のなかというのは不断に「グワァー」という音がしているわけで、これが止まると飛行機は墜ちるのだが(墜ちないこともある。例はWikipediaの「ギムリグライダー」の項を参照されたい)、QC20のノイズキャンセリング部についたスイッチをオンにすると、突然この轟音は消え去り、あたりは新幹線の車内のように静まりかえる。

新幹線の、なかだ。

音楽を聴くにせよ、iPhone側のボリュームは最小にしていても快適に聴こえる。

だから単に静かだというだけにとどまらず、耳にもいい。

あるいは邪魔であれば音楽は切っておいてもかまわない。

騒音の浄化された世界で、相対性理論の「アワーミュージック」に包まれ、私は、数年ぶりに、機内で眠りに落ちた。

 

アクティブ・ヘッドホンだから事前に充電が必要だが、フル充電で17時間ぐらいは使えた。

これはホーチミンシティを発つときに電源を入れると、乗り継ぎ便がシカゴの上空に達した頃にようやく切れるという見事な持久力だ。

しかも付属の充電ケーブルにACアダプタを接続してやれば、機内の給電ソケットからふたたび充電しながら使用を継続できる。心配にはおよばない。

唯一の難点は耳の中にいれる樹脂製のパッド部分が大きすぎることで、L/M/Sが最初からついているものの、Sを使っても私の耳でギリギリきついという印象。

どれだけきっちりフィットするかが静音効果に大きく影響するから、ここだけは購入前にご注意いただきたい。できないと思うけど。

 

で、結論としては行きも帰りもわりと機内で寝られたので、翌日の今朝から元気に仕事してますということだ。

もうこれぐらいで赦しておいてほしい。