この記事を読んで思い出したが、僕の飲む一杯目は永久に無料という約束になっているバーがあった。永久なのに「あった」とは何ごとかという話なのだが要するにいまでは約束どころか僕のことを知るひともいなくなってしまったため反故になったというか約束は永久という条件ともども円環の理に導かれていってしまったというわけだ。
ことほどさようにオーナーチェンジというのは無情なもので、競合他社を排除するのにその会社が入居していたビルをビルごと競売で落札して立ち退かせたという強面の会社について聞いたことがあるが、この話にはこれ以上立ち入らないようにする。
ボストン・スポーツ・クラブという大手フランチャイズとおぼしきフィットネス・クラブの末端組織に構成員として届出をする。
ロッカーには鍵がなく、各自南京錠を買ってくるようにと云われた。合理的だ。
鍵を持って帰ることで数限りあるロッカーを私物化するヤツも出ないし、鍵をなくして手数料を取られるバカもいない。番号式の南京錠ならエクササイズの間は鍵を持ち歩く必要もなくて楽だ。
アメリカというのはもしかして、学校のロッカーも「鍵は自分たちで南京錠を買ってきてね」という仕組みなのだろうか。それでコンビニにも物々しい南京錠がたくさん売っているのかと合点する。
しかしあの程度のナンバーロック式錠前は慣れていれば1分もかけずに解錠できてしまうから、学校ではさぞやイタズラ、盗難などが横行していることだろうと非リアの皆様を思いやることしばし。
小学生の頃、ルパン三世にはまった友人が停めてある自転車のチェーンロック(3桁のナンバーロック式)を片っ端から解錠して得意げに帰宅したところ、のちにそのうちの一台が何者かによって盗まれてしまい、あらぬ罪をかけられて(罪はないとは云えないけど)真っ青になっていたのを少し思い出す。
もっと云えば、それで納得がいったこの光景。
学生たちがいま終わろうとする学生生活を飾った一種のアバンチュールを記念して学校で使っていた錠前をここの金網に残していく。
あるいはこの地で生まれた永遠の愛を誓いつつそれぞれの道を行こうというのだろうか。
バカは恋人達の特権であるからそれをもってどうこう云う野暮なつもりは毛頭ないが、この「永遠」というやつもオーナーチェンジなぞによって容易に無効化するから、鍵をかけておくというよりは南京錠以上のコストはかけないように気を付けたまえというところだ。
なおセーヌ河もさることながらこの橋の下は高速でクルマの行き交うマサチューセッツ・ターンパイクであって、なにかあっても「重すぎて壊れる」では済まない。
写真右から三番目の黒い錠前は、私がウォルグリーン・マートで購ったのと同じタイプで800円ほどである。