新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

マネーゲームは人生を内包しうるか。

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「人生ゲームM&A」をいまさら購入。

当時ライブドア堀江貴文氏が監修に名を連ねた、玩具というか作品である。

彼が上告趣意書を提出したのを機に、我々が踊るあいだに流れていた曲が「バブル」であったことを確認したく思い、オークションで手に入れた。

ちらと箱のなかをあらためると、たしかに1000億円の紙幣やら1兆円の約束手形やらでひどく賑やかだがプレイする予定はない。


そしてこの日、「この会社で一生働きたい」と希望する新卒社員が50%を超えたというニュースが流れた。

新興市場が熱狂に沸いたあの頃は、面接にきているクセに

「独立して、起業するのが夢です!」

なんて云ってのけちゃうフリーターが多く、物の道理をわかってもらうのが大変だった。

まず現在フリーターである彼は、原理的にそれ以上独立できない。これは重要だ。

つまり彼は今日、ここで採用されることを前提に独立を語っているわけだが、それでは面接官として彼を採用すべきかどうか勘案すべき私の立場がないし、仮に採用が決まったとして、さらに「独立」即ち辞めちゃうことを目的にして入ってくる社員を心から気持ちよく遇することのできる度量というのはなかなか並の会社にはもてたものでない。

「うちで経験を積んだらいずれ独立するんだというぐらい、勢いのある若者を求めています!」

などと胸を張って云っている社長さんがたまにいたりして、それは本当にそうだと拍手を送ったりもするのだが、ところがそのとき、えてして現場というのは

「その『若者』を育てんのは一体だれなんだよ?」

などとぼやきつつガード下であたりめをせせりながらビールを飲んだりしているものなのである。


「一生この会社で働きたい」。


まあいい。

転職によるキャリアアップが当たり前のように横行し、なにかと云えば起業のチャンスを狙っているヤツらばかりの時代は終わってしまい、回答欄は空白のままだ。

堀江さんは「マネーゲーム」が「人生ゲーム」たりえないことを自ら証明してしまったし、それを証拠に彼の監修した「人生ゲーム」が定価を割ってオークションサイトを漂っていると云えば、たしかに意地は悪すぎるかもしれない。


しかし破綻した大人の世界というのはことの大小を問わず惨めで気まずいものだ。

「新卒社員」の云いようをあげつらい、自分たちだけが物をわかっているかのような物云いは、せめてやめておこうと思った。

人生ゲーム M&A

人生ゲーム M&A