新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

2010-01-01から1年間の記事一覧

ビギナーズ・ラックが新兵たちを救ったか?

「コーヒーのお代わりはいかがですか」テーブルの脇に張り付いた男が尋ねるのは3回目だった。訊かれる度にイエスと応じることに決めていた僕はもう一度命じた。「イエス、プリーズ」僕が時差の計算を間違えたせいでT氏は1時間も早く朝食に起こされている。言…

租界にて。世界はゆっくりと分解を始める。

空港からダッカ市内へと続く道は渋滞していた。乗用車とバス、その間を埋めるオートリキシャが片側三車線はありそうな立派な道路に敷き詰められている。もともと平日は渋滞がひどいからという理由でこちらの週末にあたる金曜日、土曜日にあわせた日程だった…

観光地ではないどこかへ。

在日バングラデシュ大使館は、JR目黒駅を出て山手通りをわたり、さらに10分ほど歩いた閑静な住宅街のなかにある。まったく同じ造りの一戸建てが二軒並んだかたちの大使館の、向かって右手側の建物でビザの申請や発給が行われ、左手の建物には商務部が入って…

ダッカ2010。

夕方5時のシンガポール・チャンギ空港は閑散としていた。 トランジットは1時間しかないし、シンガポール航空の航空券には「出発10分前までにゲートへこなければ、お前を置いて飛行機は飛ぶ」と、心なしかシンガポールらしいと思われる警告が記されているから…

うどんを抜く。エビフライ。若きモンスターを乗せ、エアバスは南を目指す。

機材はエアバス380。大揉めに揉めた挙げ句やっとこさロールアウトした世界最大の旅客機だ。シンガポール航空はその最初の機体を引き受けたローンチカスタマー である。 いまやゲンかつぎになっているフライト前のうどん にも朝10時ではさすがに手が伸びず、…

許された盗撮としてのドキュメンタリーはフィクションに対し奇妙な近似を見せる。

渋谷は東急本店Bunkamuraシアターにて映画・「パリ・オペラ座のすべて 」を観劇す。 さて監督のフレデリック・ワイズマンなる男はドキュメンタリー職人であるということらしく、本作もセリフ・ナレーション一切なしで堂々160分という長尺だ。 世界に冠たるオ…

神話からの脱出。

渋谷はBunkamuraル・シネマにて「ベジャール、そしてバレエはつづく」が公開中。 ローザンヌ市が世界に誇るバレエ団を取材したドキュメンタリーだが、私は2011年1月のローザンヌ国際バレエコンクールを見物するためについ先日よりフランス語を始めたりしてい…

敗北の軌跡。

ある日20ページを越す大部のパワーポイントがメールで送られてきた。 タイトルは「敗北の軌跡」。 5年前にスポンサーを得て起業した同い年の男による自伝だった。 ようやくそこそこ食っていけるようになった会社を部下に譲って退く決断を、彼は敗北と呼ぶ…

どこへ行ったんだ、タイガー。

カップに蹴られたボールはゆるやかな傾斜を転げてバンカーへと落ちた。ギャラリーのどよめきはうねりのようだ。 気がつくと僕は最終ホールのグリーンで、砂に埋もれたボールを呆然と見やっていた。 最終日のここまで三打差の二位へ追い上げてきたゴルファー…

換装。海岸線はやつらの手に渡った。

初夏のある日、懇意にしている退役自衛官が尋ねてくる。 招き入れた部屋では駐屯地の土産にもらった自衛隊のカレンダーを壁に掛けている。 「これがシーホークですよ」ヘリコプターのパイロットだった彼が椅子に腰掛けながら教えてくれた。「僕はこれに乗っ…

「幸運が、お前には必要になるだろう」と黒人は叫んだ。

< 日比谷・日生劇場にて「キャバレー」観劇。 「Das walt ist Kabaret ! 世界は、キャバレーだ!」とのっけから大見得を切る諸星和己がいけない。いつもテレビサイズのカメラが自分を追いかけているという錯覚が抜けないものだから、やはり生涯舞台には向く…

手売りのCDは買わない。だが山本直樹のサぅうわぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁっぁ!!!

ロックをたしなむ知り合いが昔から多く、演奏会に呼ばれることが絶えない。 そこでその晩ステージにあがる名もなきバンドを気に入ることもあるが、その場では断じて手売りのCDを買わないことにしている。 だいたいミュージシャンなどというものはおしなべて…